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 >> 夏休みらしく朗さんとオフ会(前編)
 今回はレポートの前にまず補足をしたい。今更な話ではあるが、「濁った瞳の奥に」の朗さんは私の中学時代の同級生だ。もっと言えば同じ生徒会の役員。もっともっと言えば、下の名前で呼び合うような仲。そして、朗さんが私の初恋の人だった。古株の方ならご存知かもしれないが、私の初恋の人は中学3年に進級する直前に引っ越すことになり、案の定転校してしまった。結局、思いのたけをぶちまけることもなく、私は私で勝手にそれを処理し、彼女のこともわからずじまい、諦めることしかできなかった。その後、数年の後にたまたまweb上で朗さんを発見。プロフィールを見てもどこか見覚えのある雰囲気、思い出話には思い当たる節がある。私が思い切って確認してみたところ、見事にビンゴ。朗さんはまさにその人だった。そして現在に至り、今回このような機会によって久しぶりに面会することとなった次第である。最後に会ったのは5年前。言い知れぬ期待と不安。京都と東京なんか地図で見れば人差し指と親指の距離だ、こんなの近いじゃんか、と息巻いていた時期もあったが、それももう5年も前の話。それがこのようなカタチで再会できることになろうとは・・・
 今回は前回とは違い、面が割れているので直接上野駅に迎えに行くことに。というよりも、私が迎えに行きたかったというのが大きかった。上野の人の量は尋常ではない。夏休みのここがどうなるかぐらい予想もできただろうに、よくもまぁ私もこんな酔狂なことができたものだ。東海道新幹線から下車する人々が通る改札を1人1人目を通していく。しばらくすると、髪を1つにまとめ、軽く化粧をした女性が現れた。少し痩せてはいるが、昔とそう変わらない、朗さんだった。駅の柱を囲むように人の輪ができている。そこの一角で私たちは再会を果たすことになった。「・・・久しぶり!」「・・・お久しぶりで」いざとなると口から出る言葉が少ない。この悪い癖はどうにかならないものか。毎度毎度、私は話かける側になることができない。決まって私はレシーバー。「っで、今日はどーすんの?ユーちゃん?」「・・・その呼び方やめんさい、いつまでたっても慣れん」「いーじゃん、ユーちゃーん」「・・・今日はとりあえず銀座でいいんでしょ?なんか食べたいんじゃなかったの?」「いちご!銀座いちご!・・・でもアレ外じゃ食べらんないし・・・行くとこないならそこでいいけど?」他に適当な場所を探すのも億劫だし、なおかつ今から決めるとなると朗さんが文句たれそうだしで、半ば強制的に目的地は銀座となった。唯一の気がかりは、財布の中身。頼むから帰りの電車賃だけは残ってくれよ・・・!
「お上りさん丸出し・・・!」 「外人さんがジロジロ見てるって!」
 「まったく、恥ずかしいねー。ケータイ片手に駅の看板撮るなんて・・・!」「うっせ!レポートに使うんじゃ!」「律儀だねー」
 山手線でJR有楽町駅、そこから徒歩で銀座へ。私が地下鉄をそんなに使わなかったり、駅の構造を把握してなかったりと色々あるので安全策をとった。隣から、銀座線があったじゃん、とか、なんだ地下鉄嫌いって!とか聞こえてくるがあーあー聞こえなーい。ここらから昔の空気が戻ってきたような気がする。髪上げないの?で次の日には髪型が変わっているあの空気。いちいち嬉しい出来事が起こったあの頃の空気。テンションの高ぶりは抑えられなかった。顔が自然とにやける。くそ、自分でも自分が気持ち悪いのがわかる。無理してでも口角は下げなくては・・・!「・・・なんか外人さん多いよね?」「ん?ああ、でも京都もこんなもんじゃないの?」「ほとんど滋賀だからそーでも・・・」「滋賀県在住でしたか、朗さんは」「他人に滋賀と一緒くたにされるのは屈辱・・・!」「東京いた時もほとんど千葉みてーなとこ住んでたじゃねーか」「・・・!うるさいなー!!」こんな会話が私にはたまらなく嬉しかった。
 しばらく銀座の街を歩く。中央通り、ここは東京らしい東京だ。まさかここを朗さんと2人で歩くことになろうとは。まったくなにが起こるかわからんなぁ。しかし・・・どうしたものか。私はこのままなにもなく1日を終えてもよいのだろうか。ここであの日の思いを復興させるべきか、はたして封印しておくべきか。初恋は初恋のまま、このまま心底に埋めておくのが良しなのか、掘り返すのがよしなのか。考えてみれば、すさまじいタイミングで再会してしまった。忘れかけてたものをなぜこうやって・・・「東京だねー、うん、実に東京だ」「そりゃ東京ですから。東京らしからぬ東京なんて東京じゃないで東京」「・・・なにわけわからんことを」「あ、そうそう文房具屋寄らせてくれ」「なに買うのさ?」「・・・文房具」かくしてユーと朗の微妙なコンビは銀座・伊東屋へ。ああ・・・どうしようかな、まったく(つづく)

070812

「夏休みらしく朗さんとオフ会」(後編)

ほーむ


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